現在では趣味やスポーツとして楽しまれている自転車。でも「昭和」の人々にとって、自転車とは荷物を運んだり、移動販売したりするための実用的な乗り物でした。「昭和」の30~40年代には、「わらび餅」「ポン菓子」「焼き芋」などの移動販売車が自転車で牽引されていましたし、いまでは原付バイクが使われることの多いお蕎麦やカツ丼の出前にも、「昭和」の時代には自転車がよく使われていました。

そんな「昭和」の時代を自転車で振り返るのが「自転車が語る昭和」展。東京都品川区の自転車文化センターで10月7日から開催されます。
 
自転車文化センターの Web サイトには、「自転車が語る昭和」展について次の説明があります。

「『昭和』の時代は、二度の世界大戦を経て復興を果たした我が国にとって激動の時代であり、人々が活気に満ち溢れた時代でした。
≪中略≫
 今回の特別展示では、昭和の各年代の自転車と資料を通じて、我が国の人々の暮らしに自転車がどのように役立ち変遷してきたのか、この64年の長きに渡る昭和の歴史を自転車を通じて感じて下さい」

「自転車が語る昭和」展では、昭和11年の「山口スポーツ軽快車」や、昭和22年の「十字号1型」などが展示される予定です。

このうち、昭和22年から生産開始された「十字号1型」は非常に興味深い自転車。製造には、戦時中に航空機製造用のプレス機が使われたため、溶接ではなくてプレスによってボディが組まれているのです。このためか、フロントフォークは真っ直ぐ。そしてフレームは一本だけです。そのボディの一部には、やはり戦時中に生産されたアルミが使用されているのだとか。こんな自転車、現在では見ることができません。是非この目で実物を確認してみたいところです。

昭和22年から生産開始された「十字号1型」
昭和22年から生産開始された「十字号1型」

一方、昭和11年に生産された「山口スポーツ軽快車」は、「十字号1型」と比較するとずっと現代の自転車に近い設計を持つ1台。フォークもちゃんと曲がっているし、写真で見る限り、製造にはリベット接合ではなく溶接が使われているようです。前輪泥よけカバーの上には、「風きりマスコット」も取り付けられており、経済的・精神的な余裕を感じられます。より古い時代のものの方が、より現代の自転車に近くなってしまう。そんな戦争の影響を、この2台の自転車から見て取ることができます。

そういえば最近、自動車の「ボンネットマスコット」も見なくなりましたね
そういえば最近、自動車の「ボンネットマスコット」も見なくなりましたね

特別展示「自転車が語る昭和」展の開催期間は、10月7日から12月25日まで。自転車文化センターの開館時間や定休日などについては、同センターの Web サイトで確認してください。