昨年出会ったオランダ在住のある中国人が、こんなことを語っていました。

「私が子どもの頃住んでいた北京の道路は、自転車で埋め尽くされていました。ヨーロッパにやってきて、憧れのクルマ生活を楽しめると思ったら、オランダはいまや自転車だらけ(笑)。皮肉なことに、北京がクルマだらけになっています。僕は、クルマに嫌われているのかもしれません」


この中国人の語った通り、欧州の国々は馬車や自転車の時代から一旦クルマの時代を経て、再び自転車の時代に突入しつつあります。

でも、21世紀の自転車は以前のそれとはだいぶ違っています。その1つの例が、イタリアローマ在住のSerena Celaniさんが開発した「DuoBike」。サイクリストに安全性、安定性を提供しつつ、自転車で走る楽しみも維持している4輪自転車です。

安全性、安定性を提供しつつ、走る楽しみも維持した4輪自転車「DuoBike」
安全性、安定性を提供しつつ、走る楽しみも維持した4輪自転車「DuoBike」

「DuoBike」は、一見したところ、2台の自転車を溶接してくっつけただけのような乗り物。でも、実はこの「DuoBike」には、21世紀の自転車であるための多くの工夫が凝らされています。

一見、2台をくっつけただけ  豪快なルックスです
一見、2台をくっつけただけ
豪快なルックスです

その1つ目は、サドルの位置。通常の自転車よりもずっと低い位置に取り付けられ、周囲はサイドフレームで囲まれました。このサイドフレームは、事故が発生したときにサイクリストの身体を保護してくれるそうです。自動車レベルとは言えないまでも、一般的な自転車よりも高い安全性を提供できること。これが、21世紀の自転車たる条件その1なのだとか。

普通の自転車は身体はむき出し  それに比べると、守られ感がありそうです
普通の自転車は身体はむき出し
それに比べると、守られ感がありそうです

ペダルは、前輪ハブの少し手前に設置。低めのサドル位置とあいまって、ライディングポジションは、リカンベント・トライクに近いものとなります。このポジションは、平地であれば、一般的な自転車よりもより高速に走行できるもの。これにより25キロの重めのボディでありながら、時速30キロでの走行を可能にしています。高速移動が可能。これが21世紀の自転車の条件その2なのだそうです。

寝そべり気味のライディングポジション  高速走行できます  坂は(多分)苦手ですが…。
寝そべり気味のライディングポジション
高速走行できます
坂は(多分)苦手ですが…。

4輪なので安定性が高いため、自転車に乗れない人も、わずかなトレーニングで乗れるようになります。また4輪は、雨や雪の日の走行にも強いというメリットも。この“誰でも乗れる”“いつでも乗れる”というのが、21世紀の自転車の条件その3です。

雨の日にスリップして倒れる…なんてことはなさそうです
雨の日にスリップして倒れる…なんてことはなさそうです

「DuoBike」のもう1つの特徴は、カーブ時に車体を20度まで傾けられる点にあります。これにより、2輪の自転車同様に、軽快なハンドリングを楽しむことができるようになりました。このあたり、ヤマハの125ccの3輪バイク「TRICITY(トリシティ)」に少し似ているかもしれません。

この状態で、ぺダリングパワーをちゃんと後輪に伝達できる  これって、かなりの技術です
この状態で、ぺダリングパワーをちゃんと後輪に伝達できる
これって、かなりの技術です

カーブを楽しめます
カーブを楽しめます

参考画像:ヤマハの「TRICITY」  3輪なのに曲がるのが楽しい、画期的なバイクです
参考画像:ヤマハの「TRICITY」
3輪なのに曲がるのが楽しい、画期的なバイクです

「TRICITY」同様、前輪には左右独立サスペンションを搭載。道の変化に合わせて2輪が動く、安定感のある走りを実現しています。

左右独立サスペンション  ストロークもそこそこありそうですね
左右独立サスペンション
ストロークもそこそこありそうですね

「DuoBike」は現在、プロトタイプ段階にあり、2016年12月頃の出荷を目指して開発が進められています。製品版では電動アシスト機能が付属したバージョンもラインナップされる予定。価格は(アシスト機能のない)標準的なバージョンで、2,200~3,300ドル前後になる見込みです。