クルマの世界ではかつて、ハイブリッド車といえば「プリウス」のことを指していた時期があった。だがいまでは、多くの車種でガソリン車かハイブリッド車かを選択できるようになっており、また両者の外見上の違いもほとんどなくなっている。

欧州では、自転車の世界でも同じような変化が起き始めている。多くの車種で、電動アシストかそうでないかを選択できるようになりつつあるのだ。そして両者の外見上の違いも、なくなりつつある。


オランダメーカーVanMoofによる自転車は、そのような例の1つ。同社の電動アシスト自転車バージョン「Electrified S」と標準バージョン「Standard」を初見で見分けるのはかなり困難だろう。

VanMoofの「Electrified S」  (電動アシスト付きバージョン)  
VanMoofの「Electrified S」
(電動アシスト付きバージョン)

では、見分けるにはどうしたらよいのだろうか?ポイントは、「前輪のハブ」と「ダウンチューブ」だ。

標準版と電動アシスト版の違いは、ダウンチューブと前輪のハブ
標準版と電動アシスト版の違いは、ダウンチューブと前輪のハブ

「Electrified S」の前輪ハブには、ハブモーターが装着されている。ハブモーターの小型化は、電動アシストに見えないルックスに大きく貢献していると言われている。とはいえ、「Standard」モデルと比較すれば、ハブ部分のサイズが違うのは一目瞭然。ここを見れば、電動アシストであることがわかるだろう。

左がハブモーターのついた電動アシスト版  右はハブにモーターの装着されていない通常版
左がハブモーターのついた電動アシスト版
右はハブにモーターの装着されていない通常版

「Electrified S」のハブモーターには、ブーストボタンが取り付けられているのが大きな特徴。ハンドルバーに取り付けられたボタンを押せば、モーター出力がブースト。向かい風や上り坂での走行を楽にしてくれる。

ブーストボタンによりモーターの出力がアップ  坂道や向かい風でも楽に走行できる
ブーストボタンによりモーターの出力がアップ
坂道や向かい風でも楽に走行できる

バッテリーは、ダウンチューブの中に組み込まれており、やはり電動アシストらしくないルックスの形成に貢献をしている。だが、バッテリーが組み込まれた分、「Standard」モデルよりもチューブの太さは増した。ここも、電動アシストであることを見破れるポイントだ。バッテリーは大容量で、最大で120キロまでの走行アシストが可能になっている。

左がバッテリーが組み込まれたダウンチューブ  右はバッテリーが組み込まれていない標準版のダウンチューブ
左がバッテリーが組み込まれたダウンチューブ
右はバッテリーが組み込まれていない標準版のダウンチューブ

これまでは、電動アシスト自転車独特のデザインに耐えられる人がアシストを買い、そうでない人はモーターのついていない自転車を買うということがあった。だが、ほぼ同じデザインで電動アシスト版とスタンダード版が提供されることで、予算とライフスタイルにあわせて、電動アシストかスタンダードからを選べるようになった。このあたりについては、欧州メーカーに敬意を表したい。

デザインは重要ですよね
デザインは重要ですよね

電動アシスト自転車では当たり前になってきつつあるが、スマートフォンとの連携も可能だ。専用アプリを使用すれば、バッテリーの残容量を確認したり、ワンタップで自転車をロック/アンロックしたり、駐輪した場所を表示させたりが可能。ライトの点灯/消灯も、アプリからコントロールできる。

スマートフォン連携機能は、一般的な欧州車レベル
スマートフォン連携機能は、一般的な欧州車レベル

重さは18.4キロと、電動アシストとしては軽量を実現した。

バッテリーが切れても、ペダルを漕いで家まで帰れる
バッテリーが切れても、ペダルを漕いで家まで帰れる

オランダらしいなと思わせるのは、対応身長。170センチ以上、210センチまでとなっているのだ。これは、平均身長が男性で184センチ、女性でも171センチのオランダならではのことだろう。筆者は以前オランダに出かけたとき、男性用小便器の取り付け位置がやたら高くて苦労したことがある。ちなみに日本人の平均身長は男性が171センチで、女性は158センチだ。

身長2メートル10センチまで対応  日本だと、バレー選手くらい?
身長2メートル10センチまで対応
日本だと、バレー選手くらい?

残念ながら日本への発送は受け付けていない。また、なんらかの方法で入手できたとしても、最高速度が時速32キロに設定されているため、日本で公道を走行するにはナンバーの取得が必要となる上、必ずしもナンバーが取得できるとは限らないというリスクもある。このようなことを考え合わせれば、日本への輸出非対応は仕方のないことかもしれない。

スタンダードバージョンなら、問題なく乗れます
スタンダードバージョンなら、問題なく乗れます

だか、電動アシスト機能の装備されていない「STANDARD」であれば、公道走行は問題ない。こちらのバージョンだけでも、日本の輸入代理店が扱ってくれないものだろうか。