エコカーとして人気の高いトヨタ「プリウス」と「プリウス PHV」。「プリウス」は既存のガソリンスタンドで燃料補給できるハイブリッドカーとして、そして「プリウス PHV」は“充電できる”プリウスとして知られています。街中からガソリンスタンドが消えつつある現在、「ちょっとそこまで」にはバッテリーで、確実にガソリンスタンドが見つかる高速道路ではガソリンで走行できる「プリウス PHV」はとても魅力的です。

“充電できる”プリウス「プリウス PHV」
“充電できる”プリウス「プリウス PHV」

でも、「プリウス PHV」の魅力はそれだけではありませんでした。えん乗り編集部では、「プリウス」と「プリウス PHV」に試乗する機会を得て2台を検証。5つの違いを発見しました。


「プリウス PHV」は「プリウス」と比べて、ちょっとリュクスな雰囲気を持つ“高級車”テイストの一台だったのです。

■比べてわかった5つの違い
◆違いその1:車内の騒音レベルが違う


車内の騒音騒音レベルを比較した結果、様々な利用シーンで「プリウス PHV」の方が、静かであることがわかりました。

「プリウス」の停車時(パワースイッチオン時)の騒音レベルは53デシベルと「静かな事務所」並み。自動車の車内としては、とても静かな環境と言って良いでしょう。

でも「プリウス PHV」の停車時の騒音レベルは45デシベル。これは「静かな住宅地」「深夜の市内」「図書館」並みの驚異的な静かさです。

「プリウス」停車時の騒音レベル(左)と「プリウス PHV」の騒音レベル(右)
「プリウス」停車時の騒音レベル(左)と「プリウス PHV」の騒音レベル(右)

時速30キロで走行した場合の騒音レベルでは、「プリウス」は76デシベルで「プリウス PHV」は62デシベルと、やはり「プリウス PHV」の方が静かでした。「プリウス PHV」はモーター音が静かなだけでなく、ロードノイズや、車外の様々な音に対する遮音性も高くなっていると感じます。

時速30キロ走行時の騒音レベル(プリウス PHV)
時速30キロ走行時の騒音レベル(プリウス PHV)

車内でオーディオを聞くのが好きだという方には、「プリウス PHV」はおススメ。小さな音であっても、はっきりと聞きとれます。彼女とのドライブにも「プリウス PHV」は適しています。小さな声で愛を“囁いて”も、相手には声が(そして気持ちが)届きますよ。

ちょっと残念なのはエアコン。停止状態で「プリウス PHV」のスイッチをオンにしたところ、室内の騒音レベルは76デシベルにまで跳ね上がり、この日の試乗でもっとも高い数値を記録しました。この騒音レベルは、「プリウス」で時速30キロ走行をしているとき以上のもの。ガソリン車であればさほど気にならないエアコンの音が、「プリウス PHV」が静かであるがゆえに、うるさく感じてしまうという現象が発生してしまうのです。

せっかくの静かな「プリウス PHV」。なんとかならないものでしょうか?

(注:調査で使用した iPhone アプリ版の騒音計測機は、必ずしも正確な騒音レベルを計測できるものではありません。計測された数値は、「プリウス」と「プリウス PHV」を比較するための参考情報として扱っています)

◆違いその2:「プリウス PHV」の快適温熱シートとステアリングヒーターはかなりうれしい

取材をした日の東京は、雨の降るとても寒い天気。エアコン全開で車内を暖めないと凍えてしまいそうなお天気でした。

前述の通り、「プリウス PHV」でエアコンをオンにすると、静かな車内が台無し。でも「プリウス PHV」には、ハンドルを温める「ステアリングヒーター」と、シートを温める「快適温熱シート」という強い味方が標準装備されています。

ハンドルを温める「ステアリングヒーター」  「プリウス PHV」だけの装備です
ハンドルを温める「ステアリングヒーター」
「プリウス PHV」だけの装備です

「いくらハンドルとシートを温めても、車内の空気が冷たかったら、やっぱり寒く感じるんじゃないの?」

そう思う方は、トイレの「温熱便座」を思い浮かべてみてください。トイレ室内にエアコンを設置することは難しいため、多くの場合、トイレ室内の空気は冷え切っています。でも、便座が暖かければ、室内が寒くてもがまんできてしまうもの。

「ステアリングヒーター」と「快適温熱シート」も、それと同じ役目を果たします。車内の空気は冷えていても、身体が直接触れる部分が暖かければ、不思議と寒さは気にならないものです。

「あったかいんだから~」
「あったかいんだから~」

◆違いその3:「インテリア」

「プリウス PHV」のインテリアは、「プリウス」よりもちょっと豪華。例えば「プリウス」では、グローブボックス上の小物入れが見るからにプラスティックなのですが、「プリウス PHV」ではやわらかい素材が使用されている上にスティッチが入っていて、ゴージャス感を演出しています。

「プリウス」といえば、米国のセレブや企業の重役が所有していることで知られているクルマ。例えば筆者は2013年5月、ハフィントンポストのアリアナハフィントン氏にインタビューをしましたが、その時点でハフィントン氏もプリウスを所有されていました。当時、ハフィントン氏は、プリウスについて次のように語っています。

「初期プリウスはデザインが今ひとつで、まるでゴルフカートのようでした。私はその頃からプリウスに乗っているのです。いまはデザインも良くなったので、娘もプリウスに乗っていますよ」

プリウスについて語るアリアナハフィントン氏(2013年5月当時の写真)
プリウスについて語るアリアナハフィントン氏(2013年5月当時の写真)

現行プリウスのインテリアは、初代に比較すればずっと豪華。でも、セレブが満足するか?と聞かれれば、ちょっと疑問符が付きます。

その点、「プリウス PHV」のインテリアはすこしだけ高級感のある仕上がり。これならハフィントン氏も満足してくれるのでは?と思える室内空間になっています。

◆違いその4:エクステリア

エクステリアも微妙に違います。例えばドアハンドルは「プリウス」ではボディー同色ですが、「プリウス PHV」ではクローム調になっています。

「プリウス」のドアハンドル(左)と、「プリウス PHV」のドアハンドル(右)
「プリウス」のドアハンドル(左)と、「プリウス PHV」のドアハンドル(右)

リアのエンブレムは「プリウス」では貼り付けてあるだけですが、「プリウス PHV」では LED で光ります。

「プリウス」のリアのエンブレム(左)と「プリウス PHV」のリアエンブレム(右)
「プリウス」のリアのエンブレム(左)と「プリウス PHV」のリアエンブレム(右)

その他、「プリウス PHV」ではフロントグリルガーニッシュが「メッキ」に対し、「プリウス」ではボディ同色。バンパーロアグリル上部は「プリウス PHV」がシルバー色なのに対し、「プリウス」では黒色。バックドアガーニッシュが「プリウス PHV」ではシルバー色なのに対し、「プリウス」ではボデーカラー共色などなどの細かい違いがあります。


どれも本当に小さな違いですが、これらが積み重なった結果、「プリウス PHV」のエクステリアはインテリア同様、ちょっとだけ豪華な雰囲気となっています。

◆違いその5:トランク内の装備

「プリウス」のトランク内にはスペアタイヤが用意されていますが、「プリウス PHV」には装備はなく、かわりにパンク修理キットが用意されています。「プリウス PHV」ではトランクルームの下にバッテリーが搭載されているので、スペアタイヤを収納する場所がなくなったためでしょう。荷室容量とスペアタイヤを天秤にかけ、荷室の容量を維持する方を選んだようです。

ちなみに、トランクの荷室容量は、プリウスが446リットルに対して、プリウス PHV は443リットルとほぼ互角。大容量化されたバッテリーを装備しながらのこの容量は、がんばったと言えるのではないでしょうか。

「プリウス PHV」のトランクには、えん乗り女性編集部員がすっぽり入ります
「プリウス PHV」のトランクには、えん乗り女性編集部員がすっぽり入ります

■最後に:バッテリーが取り外しできれば買えるのに…

さてこの「プリウス PHV」。エコだし、ゴージャスだし、ガソリンスタンドがこの先減っても安心だしと、良いとこばかりのようですが、問題点もあります。

それは、充電ステーションの設置。一軒家に住んでいらっしゃる方なら、設置はそれほど大きな問題にならないでしょう。でも例えば、筆者のように集合住宅に住んでいて、建物には立体駐車場しかないという場合、設置はほぼ不可能です。近所の月極駐車場に充電ステーションが設置される気配もないので、都心部に住んでいる人で、「プリウス PHV」を買える人は、案外少ないのではないでしょうか?

でももし、「プリウス PHV」のバッテリーが取り外しできたら?電動アシスト自転車のバッテリーのように、本体から取り外せて、部屋に持ち帰って家庭用100ボルト電源から充電可能になったなら、購入できる人は増えるでしょう。

「プリウス PHV」のバッテリー重量は、約80キロなのだそう。でも、車両から電動で取り出せるシステムがあり、バッテリー自体もキャリーバッグのように下に車輪を付けて転がせるようになっていれば、80キロでもなんとか運べると思います。

駐車場などで充電ステーションを用意しているところも、増えてきています。海外では、企業の駐車場に設置するところも。とはいうものの、PHV の最大のメリットは、“家庭で手軽に充電できる”ところにあるはず。充電目的で駐車場に行くというのもなんだかおかしな話だし、やはり、なんとか家庭で手軽に充電できる方法があればと思うのです。

企業の駐車場に設置された充電ステーションの例  (画像は米国 Google 社の駐車場)
企業の駐車場に設置された充電ステーションの例
(画像は米国 Google 社の駐車場)

実現には様々な課題がありそうですが、トヨタの技術でなんとかならないでしょうか?検討して頂きたいところです。