ふりしきる雨の中。欄干のない細い橋の上を、走行してきた2台の実習車がほんのわずかな距離ですれ違う。恐るべき運転技能の訓練が、高知県で密かに行われていた。Twitter ユーザーの投稿した写真から、この話題はインターネット上で一気に広まった。

なんという技前か(写真はすべて Twitter ユーザーの厚意により許諾を得て転載)
なんという技前か(写真はすべて Twitter ユーザーの厚意により許諾を得て転載)

高知県の四万十川には本流、支流に「沈下橋」と呼ばれる変わった橋がかかっている。増水時に流されないよう、あえて欄干やガードレールを作らず、水没するよう設計してあるのだ。


有名なのは「佐田の沈下橋」。幅は決して広くはなく、濁流にのまれれば、輪郭すらひとときは掻き消えてしまうのではないかと思えるほど華奢にも見える。

だが雨の中、ここを訪れた1人の Twitter ユーザーは恐るべき光景を目にした。

雨の中、沈下橋へと向かう道で前方をゆく実習車、やつはどこへ
雨の中、沈下橋へと向かう道で前方をゆく実習車、やつはどこへ

橋の両端に四万十自動車学校の実習車2台があらわれ、対向で同時に走り、橋の真ん中あたりですれ違ったのだ。まるでニンジャのようだ。

橋の上にあらわれた実習車
橋の上にあらわれた実習車

そしてもう1台
そしてもう1台

アイエ!?
アイエ!?

ニンジャめいている
ニンジャめいている

衝撃を受けたユーザーが、ようすをカメラに収め、タイムラインに投稿すると、たちまち多くの人がリツイートして話題は一気に広まった。あまりにスリリングな光景に、まとめブログやバイラルメディアが群がるようにして写真を転載し、テレビ局までが押し寄せた。

しかし、そもそもいったいなぜ、四万十自動車学校は、生徒にこのような技能を伝授しているのだろうか。

同社に問い合わせたところ、これは希望者が受講する特別項目「山道コース」のひとつ。周辺で沈下橋などを生活路線として使っている人などを対象に、本人の選択によって受けられる実習だという。つまり必修ではない。

どこかほっとするとともに、こうした実習に希望者がいるということにあらためて感心させられる。四万十の歴史とともに在った沈下橋が、今も人々に利用され続けているからこそ、受け継がれている技能なのかもしれない。