紙に絵や文を印刷するかのように、さまざまな形状の立体部品を生み出せる「3D プリンター」。それを使って月面探査機を作ろうという計画が日本で進行中だ。Google が出資する賞金付きの宇宙開発レース「Google Lunar XPRIZE」に参戦する。

ハクトが開発している月面探査機
ハクトが開発している月面探査機

この計画は、日本初をうたう民間月面探査チーム「HAKUTO(ハクト)」が、3D プリンターや 3D スキャナーを販売する丸紅情報システムズと協力して進めている。


ハクトは、月面探査機の小型、軽量化に 3D プリンターを役立てようとしており、2014年に開発した試験版「プレフライトモデル」では、車輪などを作るのに使った。

実際に打ち上げ、月に到着して任務を果たする最終版「フライトモデル」でも、3D プリンターを活用する方針だ。丸紅情報システムズが販売する米国 Stratasys(ストラタシス)製 3D プリンターは、自由に部品を設計、製造でき、さらに温度変化の厳しい宇宙環境に適応できる耐熱性に優れた材料「ULTEM9085」が使える利点があるそう。

4輪探査機「ムーンレイカー」試験版。民生品を多用、車輪は 3D プリンター製
4輪探査機「ムーンレイカー」試験版。民生品を多用、車輪は 3D プリンター製

2輪探査機「テトリス」試験版。ムーンレイカーとともに軽量、小型が特徴
2輪探査機「テトリス」試験版。ムーンレイカーとともに軽量、小型が特徴

また丸紅情報システムの販売する 3D スキャナーで、実際に製造した月面探査機を読み取り、設計段階とどの程度差が出ているかを調べ、改良するとしている。

人気アニメ「エヴァンゲリオン」にあやかって「ロンギヌスの槍を月面に刺す」構想に協力を表明するなどし、何かと世間を騒がせてきたハクト。市販の 3D プリンターをどこまで宇宙で生かせるかという挑戦は、やや地味だが、なかなか興味深いところではある。

ちなみにハクトが参戦する、Google Lunar XPRIZE とは Google が費用を負担し、XPRIZE 財団が運営する、総額3,000万ドルの賞金付き宇宙開発レース。月面に純民間開発の無人探査機を着陸させ、着陸地点から 500m 以上走行し、高解像度の動画や写真を撮影して、地球に送信する。1位は賞金2,000万ドル、2位は賞金500万ドルが受け取れる。現在、世界各国から18チームが参加している。