2014年12月15日に新型燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」を販売開始したばかりのトヨタ。だが同社は早くも次世代FCVのコンセプトカー「FCV Plus」を発表した。発電所として使えるクルマだ。

トヨタがトーキョーモーターショー2015で公開した次世代FCV「FCV Plus」
トヨタがトーキョーモーターショー2015で公開した次世代FCV「FCV Plus」

「FCV Plus」のサイズは全長3,800×全幅1,750×全高1,540ミリで、ホイールベースが3,000ミリ。リモートコントロールでシートアレンジを変更したり、ハンドルを収納したりといった機能を持っている。


「FCV Plus」の全長は3,800ミリ
「FCV Plus」の全長は3,800ミリ

多彩なシートアレンジが可能
多彩なシートアレンジが可能

だが現時点で「FCV Plus」のサイズやデザイン、それに機能を云々してもあまり意味はないだろう。同車はいまから15年後の、2030年の実用化を目指すコンセプトカーだからだ。また、駆動系レイアウトにインホイールモーターを採用しているので、ホイールベースを伸ばせばキャビン部分は自由に設計できる。セダン、クーペ、SUV、ミニバンと、様々なデザイン・機能を持つFCVを作り出すことが可能なのだ。

インホイールモーターにより、キャビン部分は自由に設計できる  ランクルみたいなFCVも?
インホイールモーターにより、キャビン部分は自由に設計できる
ランクルみたいなFCVも?

「FCV Plus」で重要なポイントは、その思想にある。

トヨタによれば、多くの家庭では、クルマは一日に2~4時間程度しか使用されていないという。残りの20~22時間は、ただガレージの中で場所を塞いでいるだけ。この20~22時間を有効に使うための回答の1つが「FCV Plus」だという。

使われない20~22時間の有効活用を目指す
使われない20~22時間の有効活用を目指す

「FCV Plus」を使えば、4~5世帯の一般的な家庭が使う電力を1週間供給できる。一般的な家庭をどのようなものと想定するか、水素社会が実現した2030年頃の電化製品の電力消費量がどれほどのものなのかを予想するかは困難なので、この数値はあくまでも目安。だが災害などで停電が発生した場合、住宅地のある一角における発電所として「FCV Plus」が機能することは間違いないだろう。

トヨタマークの下にあるのが水素充填口  「発電所」として使う場合は、水素タンクとつないだままにしておける
トヨタマークの下にあるのが水素充填口
「発電所」として使う場合は、水素タンクとつないだままにしておける

身近に発電所があるというのは、ライフスタイルを変えていく可能性も持っている。例えば、人々が夏の間だけ集まる別荘地などでは、電力会社から電気を買うよりも「FCV Plus」を発電機として利用した方が手軽で安いというケースが考えられる。そうなれば、より多くの人がいまよりずっと安い価格で別荘を持てるようになるかもしれない。別荘で水素がなくなった場合の充填も簡単だ。業者に依頼して水素を運んできてもらう必要はない。「FCV Plus」はクルマでもあるので、水素ステーションまで走っていけばよい。

これまではただエネルギーを消費するだけの存在だったクルマ。そのクルマを、エネルギーを作り出す“エネカー(エネルギーカー)”へと変えていきたい。トヨタが「FCV Plus」で示した思想はここにある。

エネルギーを作り出していることを示す黄色のLED
エネルギーを作り出していることを示す黄色のLED

トヨタは、2025年~2030年までには、人々が水素を簡単に入手可能な水素社会が実現するとしている。この実現を疑う人も多い。だが、水素社会の実現を目指しているのは、日本だけではない。例えばドイツの国際化学工業メーカーLindeは、2023年までに水素ステーションをドイツ国内に400か所設置することを目指すとしている。