
「ヴェルドン バルコニー」はクライマー向けの休憩スペース。フランス在住の建築家クリストファ ベニシュさんによる空想上のプロジェクトの最新作です。

場所はフランス3大渓谷の1つであり、クライマーでにぎわうヴェルドン渓谷。フランス南部のプロバンス地方に存在する渓谷は最大700メートルの高さがあり、周辺はクライマーだけでなく頂上の展望台から絶景を楽しみたい観光客であふれています。

ベニシュさんによれば、クライマーたちはヴェルドン渓谷を上るだけでなく、崖の上から下りることも多いそう。でも移動は上下方向に限られており、彼らに左右方向への移動の自由も与えたい、というのが「ヴェルドン バルコニー」を思いついたきっかけなのだとか。

クライマーたちを風や上から落ちてくる石から守る休憩所として機能。ここまでたどり着けばクライマーたちはちょっとした休憩を取ったり、夜間であれば仮眠を取ることもできそうです。

展望台としても機能するので、崖の頂上の展望台にいる観光客とは、また一味違った景色を楽しめます。

ベニシュさんによる空想上のプロジェクトでは2016年には、フランスのモンペリエから北に30分程度のピクサンルーに設置する展望台「ザ・ティップボックス」も提案されていました。

この場所は柵などはなく、過去には誤って落ちてしまった人が何人もいる場所。その場所に設置される立方体の建築物が「ザ・ティップボックス」です。展望台の中に入るとハイカーたちは左右の視界を遮断され、下方向にフォーカスすることに。これにより、まるでここから自分の身体が離陸していくような感覚を味わえるのだとか。

でも視界が下向き以外切り取られてしまうと

ところでベニシュさんは、なぜこのようなプロジェクトを行っているのでしょうか? ベニシュさんは次のように説明しています。
「私は建築物には物語や意味が必要であると考えています。物語を持つ建築物はその場所になぜ建てられたのか、そしてその前に立つ私たちは何者で何を欲しているのかを語り掛けてきます。
物語や意味を持つ建築物はまた、それが建てられた場所の特徴より際立たせ、その場所の持つ意味をも明らかにします。
私は物語や意味を持つ建築物を、もっと世に広めていきたいと考え、このプロジェクトを続けています」
2020年はフランスに出かけてみても面白いかも。もちろん、「ヴェルドン バルコニー」「ザ・ティップボックス」もそこには存在しないのですが、ベニシュさんのプロジェクトの舞台となった場所を訪れ、「自分ならこんな建築物を作る」と想像するのは、知的な遊びとしてかなり楽しそうです。