2003年10月24日、マッハ2.04で巡航可能な超音速旅客機「コンコルド」は最後の営業飛行を終えた。

だが、NASA は新世代の超音速旅客機実現に向けたソリューションの開発を止めてはいなかった。同団体は、超音速旅客機を運用していく上で最大の課題となる「ソニックブーム」低減に向けた取り組みを続けている。

ロッキード・マーティンによる新世代超音速旅客機予想図  (出典:NASA/ロッキード・マーティン)
ロッキード・マーティンによる新世代超音速旅客機予想図
(出典:NASA/ロッキード・マーティン)

「ソニックブーム」とは、超音速で飛行する物体が上空を通過した際に、地表で観測される爆発音のような大音響。ソニックブームが引き起こす騒音問題は、超音速旅客機普及の妨げとなってきた。この課題を解決するために、NASA はソニックブームを低減可能な機体形状について研究をしている。

NASA の開発する超音速旅客機の形状コンセプトは、従来同様、細い機首、流線形の機体、三角翼によって特徴付けられるもの。では、従来のデザインと NASA のデザインはどこが異なっているのだろうか?

NASA による超音速旅客機の形状コンセプト  細い機種、流線形の機体、三角翼が特徴  (出典:NASA/Dominic Hart)
NASA による超音速旅客機の形状コンセプト
細い機種、流線形の機体、三角翼が特徴
(出典:NASA/Dominic Hart)

その1つの回答が、NASA 産業パートナーであるボーイングによる提案。従来の航空機デザインとは異なり、エンジンは翼の上部にマウントされている。

ボーイングによる新世代超音速旅客機予想図  (出典:NASA/ボーイング)
ボーイングによる新世代超音速旅客機予想図
(出典:NASA/ボーイング)

NASA ラングレイ研究センターの Coen 氏はこの形状について、次のように説明している。

「エンジンの設置場所は、ソニックブーム低減を達成する上で、非常に重要なパートを占めている。エンジンをこれまで通り翼の下に取り付けた場合、衝撃波が地表に拡散しないよう、翼の形状を丁寧に調整しなければならない。

一方、エンジンを翼の上に取り付けた場合には、衝撃波は上空に向けて拡散するので、地表には影響を与えにくい。だが、エンジンを翼の上に取り付けると、エンジンのパフォーマンスが低下するという欠点がある」

ボーイングの1.79%スケールモデルを利用した風洞実験  エンジンは翼上部に設置されている  (出典:NASA/Quentin Schwinn)
ボーイングの1.79%スケールモデルを利用した風洞実験
エンジンは翼上部に設置されている
(出典:NASA/Quentin Schwinn)

もう1つの産業パートナーロッキード・マーティンは、翼下に2機、翼の中心に1機のエンジンを搭載したデザインを提案(写真:本記事冒頭部分)。機体の形状を丁寧に作り込むことでのソニックブーム低減に向け、NASA と協働しているという。

NASA はここ数年の研究により、新世代の超音速航空機は実現に近づきつつあり、近い将来実用化される可能性があるとしている。実用化されれば、例えば東京―ロサンゼルス間が5~6時間程度で結ばれるかもしれない。