(C) 2015 Peanuts Worldwide LLC
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「ウォルト・ディズニー氏とチャールズ・M・シュルツ氏、あなたならどっちになってみたい?」

これは以前、シリコンバレーエンジニアの間でよく議論された話題の1つです。

ウォルト・ディズニー氏はアニメーターとしてキャリアをスタートさせましたが、ディズニー社設立以降は経営者としてその手腕を振るいました。一方、シュルツ氏は漫画家であることにこだわり続け、亡くなる2か月前までコミック作品『ピーナッツ』の新聞連載用原稿を、自分の手で描き続けました。

ミッキーもスヌーピーも、どちらも日本ではよく知られたキャラクターですが、それぞれの作者の持っている思想は、対象的と言っても良いくらいまったく違ったものなのです。

ディズニー氏とシュルツ氏がシリコンバレーで議論された理由は、ソフトウェアエンジニアに2つのタイプが存在したため。いずれは起業し、CEOとなって会社を経営したいと考える「ディズニー氏」タイプと、死ぬまでエンジニアとして自分の手でコードを書き続けていたいと考える「シュルツ氏タイプ」です。

日本のお笑い芸人さんで例えれば、いまではコメンテーターとして活躍されているダウンタウンの「松本人志さんタイプ」と、いまでもコントの台本を自分で書き続け、そのコントへの出演を続けているウッチャンナンチャンの「内村光良さんタイプ」でしょうか?ちょっと違いましたか?

日本企業で同じ質問を投げかければ、「自分はずっと現場にいたい」と回答する人も少なくはないでしょう。でも、シリコンバレーは一発当てたい人が世界中から集まってくる場所。起業したいという人の割合の方が高めだったのです。

ところが、筆者が「シュルツ美術館」がある米国カリフォルニア州サンタローザ周辺(シリコンバレーからはクルマで2時間程度)でこの話題を出してみたときには、シュルツ氏のような生き方を支持する人が多数派でした。筆者はこれを、シュルツ氏がこの街の人々に影響を与えた結果だと捉えています。

サンプル数があまりにも少ないので真偽のあやしい調査ではあります。でも、シュルツ氏は美術館近くにあるカフェに、いつもだいたい決まった時間に現われ、いつものメンバーとおしゃべりを楽しんでいたのだそう。そして街の人たちはその様子を、毎日のように目にしていたのだそうです。

世界中の人が知っているキャラクター「スヌーピー」。その作者がまったく偉ぶることもなく、小さな街の小さなカフェでおしゃべりをしている。そんな環境が、住民の考え方やライフスタイルに影響を与えていたとしても、それほど不思議ではないでしょう。

シュルツ美術館  Photo by Rick Samuels courtesy of the Charles M. Schulz Museum and Research Center
シュルツ美術館
Photo by Rick Samuels courtesy of the Charles M. Schulz Museum and Research Center

そんな風に、いまも人々に影響を与え続けている「シュルツ美術館」の世界初のサテライト(分館)「スヌーピーミュージアム」が東京都港区六本木にオープンします。

「スヌーピーミュージアム」では、スヌーピーたちが活躍するコミック「ピーナッツ」 の原画をはじめ、作者チャールズ・M・シュルツ氏の初期の作品、貴重なヴィンテージグッズや資料等が6か月毎に入れ替えて紹介されます。

敷地内にはモニュメントや仕掛けが配され、ハロウィンやクリスマスなどには、季節に応じたイベントも開催されるのだとか。また、ミュージアムショップでは限定品やオリジナルグッズを販売されるほか、カフェでは『ピーナッツ』にちなんだスペシャルメニューが提供されるそうです。

ディズニー氏の作ったディズニーランドはただただ楽しい場所。でも「シュルツ美術館」は、自分の人生はどうあるべきなのか?を考えさせてくれる場所です。日本にオープンする「スヌーピーミュージアム」がどのようなものになるのかは不明ですが、できればシュルツ氏の思想を紹介するものであって欲しいと願います。

例えば、上司に「そろそろ、管理職に就いてみないか?」と言われたとしましょう。20年前であればその場で「はい!」と答える人がほとんどだったと思います。でもいまでは、現場を離れたくないと考える人も多いのではないでしょうか?とはいえ、管理職に就けば今より贅沢な生活ができるのも事実。さて、どちらを選択するべきなのか?

米国の「シュルツ美術館」は、そんなときに訪れれば、ちょっとしたヒントがもらえる場所です。もし、日本の「スヌーピーミュージアム」がそんな場所になってくれたら、素敵ですよね。

そして個人的な願望ですが、シュルツ氏行きつけのカフェのテーブルも展示して欲しい。難しいでしょうが、見たいというファンは多いはずです。ソニー・クリエイティブプロダクツさん、是非、お願いします!

なお「スヌーピーミュージアム」は、2016年3月から2018年9月までの期間限定で設置される予定だそうです。