
パッフィンビリー鉄道は、20世紀初頭に建設されたオーストラリア最古の蒸気機関鉄道。遠隔地開拓のため、1900年代初期にヴィクトリア州で建設された路線のひとつだ。
現在は物資や家畜運搬用としての利用はなくなったが、ダンデノン丘陵の山裾を縫って走るこの蒸気機関車は地元の人や観光客から愛され、乗客数は飛躍的に伸びているそう。

◆ボランティアスタッフにより、ほぼ毎日運行
パッフィンビリー鉄道は、昔のまま保存された鉄道として世界でも有数のもの。現在はなんと600人以上(!)の献身的なボランティアスタッフによって運行されているそうだ。

クリスマスを除く毎日運行されており、料金は大人片道21.50ドル(約2,086円)から。車内でランチやアフタヌーンティーが楽しめるプログラムも用意されている。
◆乗ってみた
筆者も、始発駅のベルグレーブ駅からメンジーズクリーク駅までの約30分間、パッフィンビリー鉄道に乗ってみることにした。



パッフィンビリー鉄道には、ふつう電車にはめ込まれているような窓枠がない。柵の間から手足を外へ投げ出して座り、自然の風を感じながら乗車することができるのだ。こんな乗り方、日本ではまず体験できないだろう。

機関車にはたくさんの子どもたちが乗っていたが、子どもだけでなく大人たちも童心に返って楽しんでいる様子。発車を待つ間、足をばたばたさせたり、写真を撮り合ったりしている姿が印象的だった。

いよいよ汽笛が鳴り、出発のとき。見送ってくれるスタッフのハイタッチに応えながら、じわり、じわりとスピードを上げていく。

◆森の中をぐんぐん走る
機関車は徐々にスピードを上げ、緑の葉を垂らした木々が、手が届きそうで届かないギリギリのところを流れるように通り過ぎていく。



◆最大の見どころは木の橋
区間内最大の見どころは、全長91.4、高さ12.8メートルの木製トレッスル橋。沿道には緑濃い温帯雨林が広がっていて、おとぎ話のような世界観が味わえる。

橋のカーブに差し掛かると、先頭車両からもくもくと上がる煙や、ずらりと並んだ乗客たちの足がよく見える。ロマンのある光景、まるで古いハリウッド映画のワンシーンのようだ。また、橋の下には駐車場があり、機関車の写真を撮りに来た人たちがこちらに向かって手を振っている。

◆旅は道連れ
とうとう降車駅であるメンジーズクリーク駅に到着。興奮冷めやらぬまま、名残惜しい思いで列車を降りてふと見ると、周りにいた子どもも大人も弾けんばかりの笑顔だった。全員でひとつのミッションを達成したような、不思議な充足感と一体感が駅のホームを包み込んでいた。

大自然というテーマパークで体験する“本物の”アトラクション。童心にかえって手足を投げ出し乗車すれば、隣に座っている人とも言語や国境を越えて仲良くなれるかもしれない。
