
ペニー・ファージングとは、19世紀に製造された自転車。前輪が大きく後輪が小さい構造が特徴の、レトロ自転車の代名詞とも言える存在だ。チェーンによる後輪駆動のドライブトレインが開発される前に利用されていたもので、デザインの美しさから今でも愛好者が存在する。

「SnikkyBike」は、ペニー・ファージングのデザインを現代に蘇らせた電動バイク。キックスケーターの小回りの良さと、ロードバイクの安定性や快適性を併せ持っている。

開発したのはカナダ モントリオールに本拠を置くSnikkyBike。同社によれば、現在世界の人口は70億を超えているという。そのうち約半数が都市部に住んでいるが、都市部の交通は洗練されているとは言い難い。たった一人の人間を移動させるために5人乗りのクルマが利用され、交通渋滞が引き起こされている。一方で、公共の交通機関は利用者の多様なニーズに応えきれておらず、利用者に我慢を強いている。


「SnikkyBike」は、約35億人の都市生活者を幸せにする目的で開発された乗り物。サイズが小さいため交通渋滞を発生させず、利用者は自分の行きたい場所に自分のペースで移動することができる。

最大の特徴は前述の通り、前輪が大きく後輪が小さい、ペニー・ファージングに似たデザイン。だがこのデザインは美しいルックスの他にも、いくつかのメリットを利用者に提供する。

通常、都市部移動用の乗り物では、前後輪ともに小径タイヤが装着されていることが多い。この場合、ハンドリングはクイックなものとなり、“少しだけハンドルを切っても、大きく曲がる”感覚に慣れるまで、時間がかかってしまうこともある。

だが「SnikkyBike」の前輪に装着されたタイヤは自転車用の700Cサイズ。普通の自転車に近い感覚で運転が可能だ。段差も簡単に乗り越えることができる。

この700Cタイヤは、クイックリリースレバ―で取り付け/取り外しが可能。クルマなどに乗せて移動する際には便利だ。またパンクした場合でも、簡単に修理できる。

後輪が小さいことで実現したショートホイールベースは、機敏な動きを可能にした。道路上に障害物があった場合でも、素早く避けられる。

後輪が小さいことには、全長が短くなるというメリットも生んだ。電車などに持ち込む場合でも、折り畳まずに持ち込むことが可能なサイズとなったのだ(注意:北米での例)。折り畳みではないので、ボディー剛性が高まるというメリットもある。


そこから最終目的地へは「SnikkyBike」で
サドルはなく、キックスケーターのように立って乗るタイプ。搭乗者が重心位置を自由に変えられるので、カーブを曲がる際もブレーキングの際も、車体を安定させやすい。また、立ち乗りには視野が広くなるというメリットもある。

最高速度は時速32キロ。1回の充電で走行できる距離は32~40キロ。制動装置としては後輪のモーターに回生ブレーキが、前輪にキャリパーブレーキが搭載される。

フレームはアルミ合金6061で、フォークはカーボンファイバー。これらの採用により、重さ12.7キロを実現した。

市販価格は1,199米ドル。出荷時期は2016年11月になる予定だ。

ところで、21世紀のカナダで19世紀風のデザインを持つ「SnikkyBike」が開発された理由とはなんだろう?もしや、19世紀からタイムトラベルをしてきた人が、21世紀の技術に出会うことで実現されたものではないのか?
残念ながら、そうではなさそうだ。「SnikkyBike」のWebサイトには次のようにある。
「走行時は、各地域の交通法規および制限速度を遵守し、安全に心がけてください。≪中略≫「SnikkyBike」は現時点では空を飛ぶことはできません。また、時空を旅したり、他の次元にテレポートすることもできません。これらの機能については、現在弊社のエンジニアが実現に向けて取り組んでいます」
